夜のアポ|ドアの前で指輪をバッグへ
架空。玄関の明かり。バッグの中で指輪が鳴る。靴が残ったまま鎖骨の下。
ストーリーノート:指輪をバッグへ、二人の約束
アンは三十三歳、夫のグオは三十五歳。今夜のホテルは二人自身の予約だ。ドアを開ける前に指輪をバッグへ入れるのは、金属を肌に当てない、この一時間に引っかからない、と決めたからだ。バッグの中で一度鳴る。グオは内側でそれを聞く。その音が約束の挨拶だ。どう来たかを聞かないのは、道順も部屋番号も時間も二人で押さえたからだ。靴が残ったまま、鎖骨の下にキスしていいかと彼女が聞き、彼はいいと言う。
玄関の明かりは暖かい。入ったあと、二人で小さなカメラをドレッサーに置き、アンが始める。いつ止めるかは私、あなたが先に止めてと言ってもいい、と彼女は言う。グオは鎖骨へのキスをフレームに入れたい、指輪は入れたくないと言う。だからバッグがまさに彼の希望だ。二人ともしらふだ。配偶者を事実の外に置く夜ではない。ドアの内側にいるのが夫で、先にいいと言ったのも彼だ。
十五秒、指輪がバッグで鳴り、グオがドアを開ける。四十秒、そのキスがいいかと聞き、彼はうなずく。一分十秒、靴がようやく脱げ、彼女は笑ってここで止めていいと言う。彼はもう少し近くがいいと言う。一分三十五秒、ドレッサーのカメラを見て、まだ撮られていたいかと聞く。彼は二分までしたいと言う。最後に彼女が録画を止め、指輪をバッグから出して戻す。二人とも見ている。
指輪が指へ戻ったあと、アンはカメラをドレッサーの脇に残すかと聞く。グオは残さなくていい、彼女にしまってほしい、ここで止めていいと言う。二人とも金属が指の根へ戻るのを見る。玄関の灯はまだ暖かい。二分のカットはドアのあとの一段で、カードの長い時間で夜を延ばさない。ヒールは揃い、バッグは閉まった。
- 公開ライブラリ
- ホテル撮影|残業のあと「帰りは聞かないで」
- リビングの灯はついたまま。隣がノックしてくる。
- 赤いドレス|向かいの席で夫が煙草を吸う
- 曇った鏡を手で拭いて、あなたを見る。
- 唇に指を当てて「声を出さないで」
- 初めて自分でカメラを据えて、笑って枕に顔を埋めた。
- クラブ残業、灯は一つ。名札を放る。
- ウェディングドレスを着たまま「これからあなたのもの」
- オフィスの灯は一つ。シャツをほどいて机に座る。
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